公表されているものが公表されたものとは限らない。

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 今回の研究者による論文は、この引用の規定を十分に満たしている。引用においては、同48条に「出所の明示」や、過去の判例から導かれる規定(必然性、引用部分の明示、主従関係、出所の明示)もあるが、これらも十分にクリアしている。

 このとき、pixivユーザーから投稿作品が「公表(公開)したものではない」とする反論も見られる。なぜなら、pixivは会員登録(無料)が必要なSNSだからだ。さらに当該の投稿小説はすべてR-18カテゴリーであり、18歳未満には見られない設定とされていた。

 とは言え、それらの投稿小説は、ユーザー登録をして設定変更をすれば、「誰にでも見られる」状態であったことは間違いがない。この「SNSで誰でも見られる状態」を、「公表(公開)ではない」とするのは、解釈として無理があると捉えられる。

文化庁のサイトなんで落ちてるんだろうね。

公表

著作権法上の公表概念は、社会通念の公表とは少し異なっており、著作物が、権利者の了解の下に、発行され、又は上演、演奏、上映、公衆送信、口述若しくは展示の方法で公衆に提示された場合を言います(第4条)。したがって、権利者に無断で出版された場合は例え何万部が市場に配布されているとしても公表されたことになりません。また、公表は基本的には著作権が及ぶ利用形態によって公衆に提示・提供される必要がありますので、小説の原稿を誰でも読めるところに置いておいても公表とはいいません(展示権は美術と写真の著作物に限られた権利です)。


"公表は基本的には著作権が及ぶ利用形態によって公衆に提示・提供される必要がある"んですよ。

生臭いことを言うと、著作権とは著作物によって権利保有者が独占的利益を享受する権利であり、したがって、無償かつ権利保有者の有する著作権に隣接する権利を毀損しない形であれば(まず無理だが)他人の著作物の利用に制限はない。


私的自治原則により、著作権保有者は著作権行使のための、著作物の望ましい公表方法と状態を明示的に指定できる(公表権)。例えば下描きの絵をどんだけ衆目にさらしてもそれは公表ではない。下描きの絵は公表を前提とした状態ではないから。


著作権法における公表物の定義を満たすには著作権法2条にある提示形態におかれるだけでは不十分で、その著作物が公表を前提とした状態(完成形)になっていなければならない。たとえば小説が出版されたとしても、意図せざる誤字脱字や第三者による改変があれば、著作権保有者はそれを公表物として扱うことを拒否できる。


また、著作物が公表を前提とした状態にあるか否かを決定できるのは、権利の譲渡などで類推可能な場合を除いて著作権保有者のみ。したがって公衆に提示された状態であっても著作物が公表を前提とした状態にないことを理由にすれば権利者は引用を拒絶できますよ。

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公表権は無断で公表されない権利であって、著作権者が著作物に対して恣意的に著作物の公表状態を定義できるわけじゃないよ。。。公表状態を定義するのは法律と裁判所。http://www.bunka.go.jp/chosakuken/naruhodo/outline/4.3.html

2017/05/28 23:12

公表権は無断で公表されない権利であって、著作権者が著作物に対して恣意的に著作物の公表状態を定義できるわけじゃないよ。。。公表状態を定義するのは法律と裁判所。http://www.bunka.go.jp/chosakuken/naruhodo/outline/4.3.html - tokoroten999 のコメント / はてなブックマーク

id:tokoroten999 それは公表権の第三者に対する運用規定ですね。著作権法は私法なので、著作物が著作権の及ぶ状態にある(公表物)かの判断は著作権者のみが有し、特別な場合を除き裁判所の判断に優先します。過去の議論は著作物の第三者による不当な利用についてのものが多く、その法解釈は著作物が著作権の及ぶ(完成された状態にある)公表物であることを暗黙の前提においていました。しかしながらその判断は著作権者のみが有しており、公衆に提示された状態にあっても、それが著作権の及ぶ状態にあるとは限りません。著作権者は著作者人格権をも有しており、著作物が著作者の意図した完成度にあるかどうかをも決定できます。たとえば撤回された論文を執筆者の著作者人格権のもとに扱うことはできません。